独り言

美女と野獣(Beuty and The Beast)から冠詞について考えた

beauty and the beast

この間テレビで

ディズニーの「美女と野獣」を放映していました。

 

英語のタイトルは Beauty and the Beast です。

どうして野獣のBeastには定冠詞 theがついて

美女のBeautyにはtheがついていないのでしょうか?

とても不思議です。

 

インターネット上では、同様の疑問と回答がたくさんありますが、どうもしっくりきません。

 

辞書を引いてみると

Beautyは、不可算名詞としては「美」「美しさ」という概念をさします。

可算名詞として「美人」という解釈がありますから

冠詞のつかないBeautyは美女ではなく、「美しさ」と解釈するのが自然です。

 

そもそも

前述のような「名詞にtheがつくかどうか?」と考えるのは日本人的であって

ネイティブはそのような考えをせず

the をまずはじめに発音して、え〜っとなんだっけ、Beastと言うのです。

つまり

theと発音する裏には

発話者の頭のなかに

受け手とともに了解されるBeastの明確なイメージがあるがゆえに

theと発音できるわけです。

特定しうるイメージがない場合は「a」と発音するのですね。

 

ではBeautyには冠詞がないのですから

何か特定のものを指しているとは考えづらくないでしょうか?

主人公のベルをイメージしているなら

「The beauty」 あの特定できる美女(ベル)が正しいはずです。

 

とすると、Beauty and the Beast というのは

美(そのもの)と(特定の)野獣 なのではないか。

そう思います。

ネイティブでもいきなりBeautyと聞いただけで、美女を思い浮かべたりはしないはずです。

日本人がいきなり「び」と聞いても美女を発想しないのと同じで。

もしBeutyだけで美しい、しかも女性を思い浮かべてしまうのなら

美しい男性がかわいそうです。

 

ところで、ディズニーのアニメもそうですが舞台はフランス

原作もフランス語で書かれ

そのタイトルは

La Belle et la Bête

です。

 

laはthe

et はand

belleはbeauty

Bêteがbeast

とフランス語と英語で一対一で対応していますからわかりやすいですね。

 

おっとフランス語の原題には

La Belle と定冠詞がついているではないですか

しかも、Belleと大文字ではじまっています。

このBelleが人名(主人公のベル)を指しているのは間違いありません。

美しさという概念であれば大文字にする必要はなく

La belle または定冠詞なしのBelleとなるはずだからです。

 

つまりフランスの原題では

(あの特定の)ベル(という女性)と(あの特定の)野獣

だった可能性が高い。

野獣を指すBêteが大文字ではじまっているのが気になりますが

「野獣」という名前と解釈するしかありません。

 

ではなぜ英語版は素直に

The beauty and the Beast としなかったのでしょうか?

 

原題にあるLaという定冠詞をあえて削除したのには理由があるはずです。

おそらくは

The beauty and the Beast

でも特定の美女と特定の野獣を指すことはできるが

原題の持つ

「ベル(という人名)」が生きてこないからなのかと思います。

つまりフランス語のBelleがダブルミーニング(美しい・ベル)なところをthe beautyでは表現しきれない。

日本語でなら「美子と野獣」でもいいわけですが(冗談)

The beauty Belle and the Beast (美しいベルと野獣)では冗長で

タイトルとして語呂が悪いとも言えます。

 

ならいっそのこと冒頭のtheを省略し、人名ベル感も排除

「美しさ」という広い概念を持ってくることで、野獣(醜さの象徴)との対比を生かし

語呂も生かしたということなのではないかと推測します。

 

結論は

フランス語では「美しきベルと野獣

日本語では「美しき美子と野獣」=「美女と野獣

英語では「美と野獣

という感じでしょうか。

 

とここまで書いてなんですが

この解釈は、何ら言語学的な正しさを含みません。

私の英語力と大学で専攻していたフランス語の知識で考えてみたことです。すみません。

 

とりわけ、作品名という短いもののなかで

文法的な誤りなどを指摘することは意味がないことだと思っています。

私の大好きな映画「アイアムサム」も原題は「 i am sam 」だったりしますし(I am Sam の表記もあり

すべて小文字の方が、知的障害を表現するのに成功しているかもしれません)。

 

ではまた。

 

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