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不動産 宅建試験 民法との向き合い方 二重譲渡を例に

宅建受験者は

どう民法と向き合うべきか、悩むと思います。

悩むというよりは、難しすぎる、と。

 

前回

判例(最高裁判決)というのは

実質的に新しい条文みたいなものだ

と言いました。

 

宅建試験攻略を目指すあなたに

ここで断言しておきますと

 

「判例」や「通説」とやらを細かに覚える必要はありません

 

その数たるや膨大です。

 

そもそも民法の条文だけでも1000を超えるのです。

 

「木を見て森を見ない」という表現がありますよね。

まさに民法は

「木を見だしたら」負けるイメージです。

 

初学者の方ほどシンプルに考えるべきでしょう。

というか

 

法曹と呼ばれる

弁護士・裁判官・検事たちも

 

細かな条文なんて記憶せずに

ごくごくシンプルな考え方から出発しているはずです。

はず。

 

私の独断ですが

そのシンプルな出発地点とは

約束は守れ

ということだろうと思います。

 

交わされた約束が守られて

当事者が満足していれば

民法の出番などないのです。

 

お呼びでない。

 

民法が出動するケースというのは

基本的に「約束が守られていない
     
つまりは

「当事者のどちらかが、約束が果たされていないとして、不満に思っている」

という状況が必要なのです。

 

あなたが民法に取組むときに常に意識してほしいのは

 

そもそも、どんな約束をしていたのか」約束があったのか、なかったのか

「その約束によって、当事者はどのような効果を期待したのか」

というだけのことです。

 

具体的な例を見てみましょう

宅建試験の民法で頻出なのは「二重譲渡」に関する問題です。

 

Aさんが甲土地をBさんに売却したにも関わらず

Aさんは甲土地をCさんにも売却する

という

現実には滅多におめにかかれない

悪人Aさんの鬼畜の所業を発端とする事例です。

 

まず知っておいてほしいのは

「登記」というのは「対抗要件」にすぎないということです。

 

「対抗要件」
難しいですよね。

 

意外と多くの人が知らないんですけど

不動産の所有権が売買や相続で移転しても

登記したくなかったら、しなくてもいいんですよ。

 

登記をすることは義務ではありません

お金もかかりますし。

 (逆に、建物の滅失登記は義務なので、0円でできることは以前書きました)

 

現実と相違してほったらかしのままの登記なんて

ワンサカあります。

 

こういったら語弊があるのかもしれませんが

日本中の人がみんな真面目ないい人なら

不動産登記なんていらないんじゃないですかね?

 

当事者間の約束がキッチリ果たされていれば。

 

でも、現実には悪い人もいます。

Aさんのような。

 

Aさんみたいな二重譲渡行為があると

一気に「本当の権利関係」が不明確になりますよね。

 

BさんとCさんのどちらが所有権を持っているのだ??って。

 

BさんもCさんも所有権は自分にあると思っているのに

Dさんからしたら、判断がつかない

 

そんなとき、Dさんは何を頼りにしたらいいか

というので「登記」なんです。

 

民法では前述の二重譲渡の場合

先に登記を備えた方が勝つ」と言っています。

 

CさんはBさんよりも後にAさんから譲渡されたとしても、

Bさんよりも先に登記をすれば、Cさんの勝ちです。

 

こうしたことを

Cさんは(Bさんに対する)対抗要件を備えている」なんて表現します。


A
さんとBさん
とか
A
さんとCさん
とか
二者しか登場人物がいなかったら
対抗もなにもないんです。

「売りました」「買いました」でおしまい。

 

「対抗」要件なのですから
三人以上の登場人物がいるのですね。

 

Bさん可哀想

 

そんな気がしませんか??

私は思いますけど。

 

まあ、でもこれは条文に

 

「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」

 

と書かれているので仕方ないですよね。

先に登記を備えないほうがダメだと言われても。

 

じゃあ

Cさんが実はBさんが買ったということを

知っていた場合はどうなるでしょうか?

民法でいう「悪意(事情を知ってた)」というケースです。

 

結論を言えば

この場合でもCさんが勝ちます。

 

Bさん可哀想(笑)

 

なんで悪意でもCが勝つのか分かりますか?

 

条文に「善意」とか「悪意」とか書いてないからです!!

 

私はスゲエなと感心したんですけど

 

他の条文であれば

善意の第三者に対抗できない」

という表現があったりするわけです。

 

でも177条には

「第三者に対抗できない」としか書いてない、と。

 

要するに、民法というのは

善意・悪意の区別が必要であれば

民法を一番最初に作った(書いた)人が「善意の第三者に対抗できない」

と書くはずだ、ということなんです。

 

「善意」「悪意」の文言がないから

「悪意の第三者でもOKということ」

と読めるんです。

 

それくらい、ドイツの法律を参考にして民法を書いた人は細かく設計して書いた

ということで、驚くべき頭脳です。

 

こういうことは

条文を暗記してもしょうがないことですよね。

 

判例とか通説とか解釈の話です。

 

最後に

悪意のCさんというのが

実はBさんのことを大嫌いで意地悪してやろうと思って

二重譲渡に加担していた場合

 

それでもBさんは負けちゃうのか??

 

ここに至って初めてBさんは登記がなくてもCさんに勝てます。

 

背信的悪意者には登記がなくても対抗できる」と言われるものです。


こんなこと条文には書いてありませんからね(笑)

判例です。

 

条文からは「悪意」でもOKと読み取れるが

いくらなんでも陥れる意図が強い場合

BCとの関係ではBを勝たせてあげないとね~

という人情味あふれる判断です。

 

ただ

これが条文、これが判例

177条は善意だ悪意だ

94条は善意だ悪意だ

みたいに

機械的に覚えてもしょうがないと思うのです。

 

あなたの常識やバランス感覚を基にして

民法と自分の感覚がどの程度ズレているのか

そういうことを

意識しながら学習することで

民法の問題に対する苦手意識は

なくなっていくと思います。

 

ではまた。

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