2020年現在、週刊モーニングにて『こづかい万歳』という
月額21,000円のおこづかいで過ごす奮闘の日々を描いた漫画を連載中の
吉本浩二さんの名著
『淋しいのはアンタだけじゃない』をなんとしても読んでください。
3年ほど前に出版されたばかりにもかかわらず、重版がなされていないのか
全3巻を揃えるのが困難な状況が続いています。
本来であれば、新品を買って、吉本さんに印税が入るのが望ましいのですが
なんらか、重版できない事情があるのでしょう。
この本の内容は、優れた聴覚障害者のドキュメンタリーです。
唯一の難点は、タイトルである『淋しいのはアンタだけじゃない』からは
内容が全く想像できない点です。
1982年の西田敏行主演ドラマに『淋しいのはお前だけじゃない』というのがありますが
それと関係があるのかどうか。
ともあれ、一時世間を賑わした佐村河内守さんという作曲家は耳が聞こえるのか?
という疑問点から出発し、多くの聴覚障害者や研究者に取材を重ねることで
難聴や耳鳴りの程度が人によって異なること
日本では聴覚障害の研究者が極めて少なく、聴覚障害の原因・仕組みが解明されていないこと
それゆえ、対処法も確実なものはなく、国民の聴覚障害への理解も浅い
という事実を、漫画だからこそできる表現で描いた快作です。
耳の聞こえる者は、耳の聞こえない生活をリアルには想像しないものです。
しかしながら、突発性難聴は、健常者にも襲ってくる可能性がありますし
この漫画は、耳の聞こえるうちだからこそ読んでおく必要があります。
だから、この漫画がどこの書店でも手に入る状況にないというのは非常に残念ですが
おそらく(おそらくですよ)、被取材者の誰かが、重版に反対した結果なのだと思います。
フィクションであれば、どのような描写も「表現の自由だ」とはねつけられるのでしょうが
この漫画はノンフィクションなので、取材をさせてもらった人への配慮が
吉本さんにはあったということなのでしょう。優しくて誠実な人だと勝手に思っています。
聴覚障害をテーマにした作品として
大今良時さんの『聲の形』もはずせません。
ではまた。