不動産のためになる話 不動産

不動産 中間省略登記(三為)とは何か? 違法なの?

不動産の売買をしていると

「中間省略(登記)は違法だ」

「新中間省略登記は違法じゃない

などという話題になることが、たまーにあります。

 

私もお勧めする『正直不動産』という漫画のなかでも

「中間省略は違法で、買主が騙されている」という表記をしており

それはミスリードしているように感じます。

 

中間省略登記とは何か?

まず中間省略登記とは何か?ですが

A→B→Cという権利の移動があった場合に

登記簿上

A→B→Cと登記するのではなく

A→CとBを省略する登記のことをいいます。

 

一般的に物権(とくに所有権)の移転での省略を指しますが

中間省略登記という字の意味からすれば、移動があった事項の種類は問わない(所有者の住所とか)はずです。

 

なぜ中間省略が問題になるのか?

ではなぜ、中間省略がOK?だとかNG?だと議論の的になるかといえば

 

不動産登記は権利関係の移ろいを、正確に反映すべきだ」という「理念」があるからです。

 

中間省略をNGと主張する代表格は

登記の申請を受け付けている法務局、ですね。

「理念に反するからダメ」。

 

かっこ書きで「理念」としたのには理由があります。

以前、不動産登記は信じちゃダメ、という記事で書いたように

現実的に、全ての事項をタイムリーに正確に反映するのは不可能です。

それゆえ、「登記には公信力がない」のでした。

 

ですから

「不動産登記は権利関係の移ろいを、正確に反映すべきだ」というのは

理念としては正しい。目指すべきでしょう。

この理念がなければ、登記という制度自体が不要になってしまいます。

 

「目指すべきだけれど、強制することもできないし、強制するほどのメリットもない」

というのが現実です。

 

例えば

東京在住の、新潟のリゾートマンションを保有している人が

東京で3回引っ越しをしたからといって

その都度、時間や費用をかけて

新潟のリゾートマンションの不動産登記に住所変更の登記を申請すべきか(理念的にはすべき)

と聞かれたら、私なら「1・2回目の移転先は無視して、3回目(現在)の住所に変更したらいいのでは?」

と答えます。

 

不動産登記簿において

「所有者が誰か?」という情報と

「所有者の住所の変遷はどうか?」という情報

どちらが価値があるでしょうか?

 

普通に考えて、前者の「所有者は誰か?」でしょう。

理念はどうあれ、実務的に費用が節約できるのなら、省略できるなら省略したらいい

と考えるのは自然です。

 

次に「住所変更くらいなら省略してもいいけど、所有権移転は正確なほうが」

と思うかもしれませんが

どこに法的な強制力でもってラインを引くことができるのでしょうか?

 

仮に「住所の中間省略はいいが、所有権は認めないし、罰金」という法律ができたならば

「登記には公信力(裁判で証拠として認められるような証明書的な効力を)持つ」

といえるほどにみんなが所有権移転の登記をするでしょうか??

 

答えは、無理

です。

 

理由を挙げればキリがないですが

もっともわかりやすい理由として

「なぜ、世に無数にある所有物について、

不動産に限って所有権の移動の登記を強制されなければいけないのか?

と考えるといいかもしれません。

500万円のワンルームマンションの譲渡には登記が必須(罰金が課され)で

2億円の宝石の譲渡は登記が不要

という制度に合理的な理由が見当たらないからです。

 

前置きが長くなりました。すみません。

結局のところ

不動産の所有権の中間省略登記は

2020年現在、合法です。

 

「中間省略」で検索すれば「違法」などと出てくるかもしれませんが

今までも、これからも、「違法」とすることはできそうもない理由は、すでに述べました。

中間省略登記は、登記制度の理念的に好ましくはないけれど。。。ということです。

 

実務上、運用されている三為(さんため)・新中間省略登記

そして実務上、中間省略登記を可能にするために運用されているのが

第三者の為にする登記」通称「三為(さんため)」

新中間省略登記」と呼ばれる方法です。

 

ここで詳細は述べません。面白くないので。

要するに「理念はあるけれど、実務的な要請があるから合法的に中間省略登記は行われている」

と理解してもらえれば大丈夫です。

 

実務的な要請とは

A→B→CのBにとっての登録免許税などの費用の節約です。

 

中間省略の問題点

ここまで見てきたように、中間省略は違法ではなく、合法です。

しかしながら、中間省略(三為)は、ふつう、ネガティブな感じで説明されることが多いのも事実。

 

例えば

A(個人)がB(三為業者)に1,000万円で売却の契約

B(三為業者)がC(個人)に1,500万円で売却の契約

登記はA(個人)からC(個人)へ移転

B(三為業者)は登記にあらわれない

AとCで直接の売買契約が成立していれば

Aさんはプラス500万円を得ていた

または

Bさんは1,000万円で取得していた

はずなのに

Bが500万円の利益を得ているのはけしからん、と。

 

似たようなケースが、スルガ銀行の不正融資問題と一緒に出てきたため

最近は大手の仲介業者や金融機関んで中間省略(三為)契約を取り扱わない

というところも出てきました。

「顧客保護」?の観点なのでしょう。

このような感情論が飛躍して「中間省略登記は悪だ。違法だ」という話が出てきています。

 

中間省略登記は悪か?

知性的な私たちは、冷静に考えねばいけません(笑)

スルガ銀行や、その取り巻きである不動産業者らが

書類を改竄して多額の融資を実現させたことや

不動産業者が儲けて「けしからん」という感情

登記上Bが登場しないといことは別のことだと考える必要があります。

 

書類の改竄をすることは、普通にNG行為です。

けしからんのは、濡れてに粟、右から左への転売で利益を得ていることへの嫉妬であって

登記簿上に権利の移転が表示されるか否かとは直接的には無関係

ということは理解したいところです。

 

声を、超 大にしたいのですが

私は別に三為業者を擁護するわけではありません。

私の会った三為業者の98%はう●こ(自社の利益しか考えていない)なのですが

2%はまとも(自社の利益と顧客の利益の双方のバランスを考慮している)です。

 

これが100%う●こだったら、もっと批判します。

でも、2%は誠実な会社がある実感です。

自分たちが登記を省略して、税金を節約する代わりに

賃料の保証をしたり、物件の管理業務をしたり、瑕疵担保責任を負ったり

(個人Aと個人Cの売買では瑕疵担保(物件にキズがあった時の責任も免責になることが多い)してくれます。

 

しかしながら、98%の三為業者が誠実さに欠くのも事実ですから

そのような業者が保証するものを信じてはいけません。

契約書に、どのようなあなたにとって有利なことが書いてあったとしても

実際にお金を投じて裁判を起こし、勝訴判決を得たとしても

業者がお金を払ってくれる保証など、ありません。ありません。ありません。

破産をされたら?夜逃げされたら?

 

契約書に書いてあるからスムースに履行されるなどと思うのは

世間知らずですよ。

 

結局

中間省略登記が善か悪かではなく

AとCの間にBという業者が入る余地があることが問題になるべきでしょう。

直接的には無関係と書いたのは、

間接的というか、中間省略登記がスルガ問題の温床になったのは確かだからです。

 

Bは人件費や広告費をかけて物件情報と顧客情報の収集をしています。

そしてBが宅建業者であれば、瑕疵担保責任も負うことになります。

費用・時間・将来のリスクをかけて、利益を得ようとする経済活動を

不動産登記法の「理念」が制御できるはずはないと思います。

 

要するに(おそくてすみません)

・中間省略登記は、違法にはできない(なくならない)

・中間省略業者(三為業者)は、98%は悪徳(だけど、2%のまともな業者がいるのも事実)

というだけです。

 

ではまた。

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