不動産のためになる話 不動産

不動産 ハンコを押すだけでお金をもらう人

「印鑑」って紙に押された

赤い印そのものを言うって知ってました?

 

印を押す細長い棒自体は「ハンコ」と呼ぶとか。

 

なので

ハンコはどこまでいってもハンコであり

印鑑はハンコのカッコイイ呼び方ではありません。

 

不動産業界特有の言葉に

ハンコ代」というものがあります。

宅建には出ません。

 

ハンコを押してもらう対価として

お金を払うという慣行です。

 

ハンコを押してもらったり

ハンコを押したりするのは

 

債権者と言われる

主に抵当権を有している人たちなので

一般の人にはあまり馴染みはないですよね。

 

実は

不動産業界にいる人でも

売買とは無関係な人になると

「ハンコ代」といってもピンときません。

 

それくらいマイナーな知識ではありますが

「ハンコを押すだけでお金がもらえる」という事態を理解できると

 

抵当権のことがよく理解できるのでご紹介します。

 

Aさんは所有する土地に

1番目にB銀行抵当権で5,000万円

2番目にC銀行抵当権で1,000万円の借り入れをしました。

 

しばらくして

Aさんはローン返済が滞り

任意売却か競売かを迫られるように。

 

B銀行の残債はまだ3,000万円あります。

 

とりあえず

競売よりも有利と思われる任意売却で話をすすめたところ

 

3,000万円で買い手がつき

B銀行のローンの残りは完済になりそうです。

 

すると

B銀行は積極的にその任意売却を推奨します。

 

でも、C銀行は

別に自分のところに1円も入ってこない見込みです。

 

C銀行は、全然面白くありません。

 

そこでB銀行は、C銀行に持ちかけます

「50万円あげるからさ、ハンコ押してよ」と。

 

この

「ハンコ押してよ」の意味ですが

「2番目である、おたくC銀行の抵当権抹消に同意してよ」という意味です。

 

もう少し詳しく説明すると

B銀行は、C銀行の同意がなくても

競売で物件を処分して、自分のところの債権を回収することは理論上はできます。

抵当権は物権ですから、強力です。

 

でも、でもですね。

現実問題として競売で3,000万円で落札されるかどうかは不透明ですし

任意売却でC銀行の同意なく物件を処分するということは理論上は可能ですが

C銀行の抵当権が残ったままの不動産を購入する買い手など、1人もいません。

 

B銀行としては

なんとしてもC銀行の抵当権も一緒に消さないと

結局自分も1円の回収もできないのです。

 

だから「ハンコ代」と称して

B銀行へ対していくばくかのお金を包むのですね。

 

それにしたって「50万円」とか安くね??

と思ったあなたは鋭い!

 

ハンコ代って安いんです。

 

ではどうしてC銀行はハンコを押すのでしょうか?

ここからがミソです。

 

今までの話は任意売却でした。

 

ところがこれが競売だった場合

物件が3,000万円で落札されたとすると

基本的に3,000万円まるまるがB銀行に渡ります。

 

C銀行は1円ももらえません!

 

抵当権の順位というのはとても重要で

順位の高いほうが優先的に

その残債を満たすまで先にブン取ることができるのです。

 

もちろん

この土地が1億円で落札されるなら何の問題もないのです。

 

しかし実際は

売ったってローンの全てを返済できないことが圧倒的に多いのですよ。

 

順位が2番以降の抵当権者には

そうそうお金が入ってこないのですね。

 

ここでC銀行は考えます。

競売になったら0円回収かつ抵当権抹消(強制的に消されます

任意売却なら50万円回収かつ抵当権抹消

どちらを選ぶか。

 

当然、後者になります。

 

ゼロよりはマシ、という話です。

 

そもそも、第2抵当権者たるC銀行は

そういうリスクもあらかじめ考慮して融資すべきだった

とは言えるかもしれません。

 

1,000万円も貸すんじゃないよ、と。

 

ただ、最後に一つ。

 

抵当権が消えたからと言って

Aさんの返済義務が全て消滅するわけではありません。

 

C銀行は

Aさんにお金を貸し、返済がされていない以上

たとえ家がなくなったといっても

Aさんに貸金の返済を督促してきますよ。

不動産という担保ありの貸金債権

無担保の貸金債権に変わっただけ

貸金債権自体はC銀行が持ったままなのですから。

 

怖いです、か?

 

ではまた。

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