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不動産 競売(けいばい)と任意売却(任売)をわかりやすく解説

競売案件を何百件とみてきた、競売取扱主任者試験の合格者がお送りします。

 

誰かからお金を借りる代わりに、保有している不動産を担保(抵当権がついている)に差し出している状況で

お金の返済がとどこおると、「競売(けいばい)」という裁判上の手続きにかけられることがあります。

 

税金を滞納した場合に、税務当局から資産を差し押さえられてオークションにかけられることを

一般的に「公売(こうばい)」と言いますが、ここでは扱いません。

 

今回は、抵当権を設定している債権者(一般的には銀行)の申し立てに基づく

裁判上の競売と任意売却について説明をしていきます。

 

競売と任意売却を個別に説明するよりも

実際にあるケースを順番にみていくことで理解が深まると思います。

 

1. あなたがお金を借りて、銀行の抵当権を不動産につけて、不動産を所有します。

 

2. あなたは、毎月一定の額を銀行に返済していきます。

 

3. なんらかの事情で、返済が遅れてしまいます。

 

4. 滞納がはじまった段階で債権者は心配になるので

「どうかなさいましたか?」という連絡をしてくるはずです。

 

(その場合は、必ず逃げ回らずに、誠実に回答をしましょう。

怪我や病気をしてしまって働けなくなることは、あなたのせいではありませんん。

債権者の担当者にもありうることで、彼らも鬼ではありませんから

事情を聞いた上で、一時的に待ってくれるとか、減額措置を取ってくれるとか

何か対策を考えてくれる可能性が高いです。)

 

5. それにも関わらず、滞納が6ヶ月にも及んだり、不誠実な対応をしていると

お金を借りるときにあなたが銀行との間で締結した

金銭消費貸借抵当権設定契約証書」の内容に基づき

あなたは「期限の利益を喪失」します。

「期限の利益の喪失」とは、やさしく言い換えると「分割払いの権利をなくした」ということです。

法律用語はわかりにくいですが、心配しないでください。

逆にいうと、分割払いは権利だったことに注目です。

 

一般的に6ヶ月まるまる滞納を続けると、さすがに債権者も「これはアカン」となって

通告をしてくるでしょう。場合によっては3ヶ月かもしれません。

 

分割払いの権利をなくした、不動産の所有者であるあなたに対して

債権者の言いたいこと

「あなたは期限の利益を喪失しました。したがって、残りのお金を一括で返済してください」

ということだけです。

 

6. この段階であなたにできることは、残りのお金を一括で返済することだけです。

(分割払いの権利を失っているので当然のことです。)

 

7. 一括弁済をするためには、どこかからまとまったお金を調達する方法もありますが

それができたら、とっくの昔に対応しているはず。

債権者もそれは承知しているので

通常は期限の利益の喪失の通知と併せて「抵当権をつけている不動産を処分して、そのお金で返済してください」

というお願いをしてきます。

 

8.「お願い」というのがミソです。

不動産の所有権はあなたにありますから、不動産をどういう形で処分するかの

第一の決定権者は所有者であるあなたです。

 

9. 次に、債権者は任意売却という手続きを勧めてくるのが一般的です。

つまり

「あなたはお金を払わなくなってしまったけれども、

あなたが売却に協力(任意)してくれるのであれば市場で高く売ることができるでしょう」ということです。

古来より、ものを売る場合は、

開放された競争原理の働く市場に出すことで適正な価格がつくとされていので

そうしましょうということです。

 

10. あなたが任意売却に協力をする旨を債権者に伝えると

どこかの不動産業者を通じて、一般市場で売り出されることになります。

 

一般的には、売却がされるまでの月々の返済も待ってもらえるはずです。

(ただし、当然ながら未納だった返済金は物件売却時に充当されますが。)

 

そこで、あなたにとっての任意売却のメリットをあげると

任意売却により、競売よりも高値で売れる可能性があり、手元に資金が残るケースもある。

滞納による遅延損害金を債権者の裁量で免除、減免してもらえる可能性がある。

(年利14%とかで計上されますから、滞納開始から物件売却まで1年かかったとして残債が5,000万円あるとかなりの額になる)

 

反対に、任意売却における債権者側のメリットとして

競売よりも短期間で債権回収(借金の取立て)が完了する。

競売よりも高く売却できる可能性が高く、回収額が多くなるのを期待できる。

オークション形式の競売では、いくらで落札されるか最後までわからない不確実性がある

 

このように、あなたにも債権者にもメリットが多いと考えられるので

通常は任意売却に協力するのがよいでしょう。

 

11.  一方で、任意売却をしないケースというのも出てきます。

あなたが夜逃げして行方不明とか、

任意売却をしたけれども期間内(通常3〜6ヶ月くらい)に

債権者の満足する金額の買い手がつかなかったとか。

(債権者は、1円でも多く回収するのが職責なので、あまり低い金額だと債権者が売却を許可しません。

あれ?不思議ですね。あなたが不動産の所有者なのだから、いくらで売却しようがあなたの自由

なのに、債権者が売却を許可しないとはどういうことでしょうか?

答えは、債権者が抵当権の抹消(はずすこと)に同意しない、ということです。

理論的には、抵当権がついたままの不動産の所有権をあなたからBさんに移すことはできますが

現実的に、抵当権がついたままの不動産を欲しがる人は存在しないため、売却が実現しません)

 

12.  そのように任意売却が不調になってはじめて、

債権者は裁判所に対して「競売申立て」を行います。

競売の申立てを行うと、不動産に差押さえがされ、あなたは自由に売却をすることができなくなります。

こうした裁判所を通じて「強制的に物件をお金に換える手続き」なので

強制競売と呼ばれます。

ちょうど、任意売却と反対の字面になるのがこれでわかると思います。

 

13.  裁判所から競売開始の決定がなされます。

 

14. 競売手続きが開始されると

「執行官」と呼ばれる人が物件の調査をし、「評価人」と呼ばれる不動産鑑定士とともに

物件の中の調査、権利関係のヒアリングをしに家までやってきます。

行方不明や指定時間に不在の場合は、鍵屋を呼んで、無理やり鍵を開けて中に入ります。

国家権力の行使はすごいですね。

 

15. 最低の売却金額が決まったところで、入札が始まり、落札されたとします。

(競売は、内覧制度ができたものの、ほとんど実施されていないので、

相場よりも安く落札される傾向が否めません)

 

16.  売却代金から、競売費用(債権者が建て替えて払っている)や各債権者への配当がなされ

それでも余りがあれば、はじめて所有者のもとにお金が入ります

が、それでも残債を充足するには不十分、というケースが多々あります。

競売になった物件が自宅の場合、新所有者に家賃を払って住まわせてもらう

それが無理な場合でも6ヶ月以内に転居しなければいけません。

 

17.  残債がまだある場合、まだ債権者は貸金債権を持っているので、請求をしてきます

月々1万円でも払えるのであれば相談してみてください。

それすらも無理だという場合は、残念ながら破産をするしかありません

(任意売却に協力しない人の中には、任意売却だろうと競売だろうと、借金の返済ができないことが明らかで

どちらでも関係ないと自暴自棄になっているケースもあります。

任意売却であれ競売であれ、物件を売ったらおしまい、では決してないことを理解してください。)

 

以上が、競売と任意売却の簡単な解説です。

赤字ばかりですみません。

1)競売が債権者にとっては止むを得ない最終手段であり、

できれば任意売却で処理したいと考えていること

2)任意売却に協力するほうが、双方メリットがあること

3)物件を売却しても残債が残ってしまうような不動産を買うこと

(売却見込み金額よりも大きな借入金額をしてしまうこと=少ない頭金で不動産を買うこと)

は避けなければいけないこと

を理解してほしいと思います。

逆にいうと、金融機関が過大に融資をしすぎているとも言えるのですが。

 

ではまた。

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