危険負担と聞いて
「あ~アレね」と言える方を尊敬します。
「危険負担」という言葉をはじめて聞く方に説明すると
これは民法の用語です。
具体例をあげると
「Aさん所有の甲建物をBさんへ売る契約をしました。
しかし、甲建物は引き渡す前に落雷で焼失してしまいました。
さてさて、どうしたものでしょうか!?」
というお話です。
契約をした時点で
Aさんには
甲建物の引き渡し義務と
代金受領の権利が
Bさんには
代金支払い義務と
甲建物の引渡請求権がありました。
もはやAさんは
甲建物の引き渡し義務を果たすことはできません。
っていうか
別に落雷はAさんのせいじゃないし。
では
Aさんは引き渡していないのに代金はもらえるの??
Bさんの立場なら
受け取ってないのに代金を支払うべきなの??
という話です。
一体どちらが
落雷という
「偶発的で予期できない
危険による損失を負担すべきか」を危険負担と言うらしい。。
まず
危険負担って言葉が悪い(笑)
意味がわからん。
「偶発的損失負担債務」(←テキトー)
とかのほうが分かりやすいとは思います。
ここでは
AさんとBさんのどちらが
損失を負担すべきかについては書きません。
2020年の4月に民法の大改正があり
危険負担も大きく実務に即したものに変更されました。
それまでは
債権者主義・債務者主義
とか
不特定物・特定物という用語への理解が必須で、とても難解でした。
改正された民法の論点については
しばらく宅建試験でも重点的に出題されるでしょうから、
きちんとしたテキストでしっかり勉強してください。
少し他のことを書きます。
さて、危険負担の問題として
「Aさん所有の甲建物をBさんへ売る契約をしました。
しかし、甲建物は引き渡す前に落雷で焼失してしまいました。
さてさて、どうしたものでしょうか!?」
ということでした。
ここで一点だけ押さえておいてください。
「落雷で焼失」というところ。
甲建物の所有者であったAさんの「不注意」で
例えばタバコの消し忘れで燃えてしまったというのではありません。
Aさんの不注意で家がなくなってしまった場合
当然AさんはBさん(家屋の引き渡しを期待していた)
への損害賠償義務を負うわけで危険負担の問題ではなくなることを理解してください。
ではAさんとBさん、どうなっちゃうの?
という話ですが
判例では
「契約時点で所有権はBさんに移るんだから
BさんはAさんにお金を払うべき」と言っていました。
あなたは、どう思いますか??
Bさんの手元に家はこないのにお金は払え、と。
さすがにそれはちょっと酷なんじゃないの??
ってことで学説では
「登記・引渡し・代金支払いのどれかがあれば
Bさんは建物焼失の損失を甘受すべき」となっていました。
結局のところ解決策がハッキリしているのかしていないのか、
よくわかりませんよね…。
ただし、実務では危険負担が問題になることが
ほとんどありませんでした。
同業者に「危険負担」って言っても通じないですよ。
なぜ問題にならないかと言えば
「どの時点で所有権が完全に移転するか」
ということは
契約書の中の特約事項として解決(一般的に、不動産なら引き渡し時と)してしまうからです。
そして、この度の改正で実務に即して
「引き渡し時」と明文化されました。めでたしめでたし。
前述の判例も学説も
「特約なき場合、どう処理すべきか」という話なんです。
だいぶ以前に書きましたが
「契約は自由」であり
民法の規定と異なる契約がしたい場合は
特約を作って契約すればいいのです。
強行規定という一部を除けば。
特約もない、契約の形跡もない
そういう場合にはじめて民法の出番なのです。
↑この部分は、とにかく大切です。どこかにメモしておいてください。
実務では
契約書に危険負担についての
特約が付されているのが当たり前。
ですから宅建試験レベルでは
判例や学説を知っている必要がほとんどありませんし
改正によって、より理解がしやすくなった分野となりました。
ではまた。